2006年4月23日

巨人の残像

【巨人の残像】
おとうさん
おかあさん
ほら見てください
月明かりの中浮かび上がるあの山の影
あそこに巨人がじっと潜んで
僕を見つめているのです
巨人は身じろぎひとつせず
ただただ僕を見つめています
そんな時僕は決まって泣いているのです

おとうさん
おかあさん
あなたがたが感情にまかせて僕を殴りつけた時
あなたがたが苛立ちの捌け口として僕を罵る時
巨人は身じろぎひとつせず
ただただ僕を見つめていました
そんな時僕は決まって泣いているのです

我慢できなくなって僕が家を飛び出したあの日
(僕は産まれてきたのを呪い)
夜の道を独りでさまよいながら
(僕はこの世のすべてを呪い)
ただとぼとぼと歩いていたのです

あの日
巨人はいませんでした

そして今
僕が感情にまかせて誰かを殴りつけた時
僕が苛立ちの捌け口として誰かを罵る時
巨人は身じろぎひとつせず
ただただ僕を見つめています
そんな時巨人は決まって泣いているのです

巨人はあの頃よりひとまわり大きくなって
ずうっと潜んでいるのです
そこかしこの山の影
いつでも巨人がじっと潜んで
僕を見つめているのです
巨人は身じろぎひとつせず
ただただ僕を見つめています
そんな時巨人は決まって泣いているのです

僕の心が血の涙を流さないわけでもなかったのですが
僕はただ巨人に「ざまあみろ」と
そう言う事しかできやしない
そう言う事しかできやしないのです