「明和電機 ナンセンス=マシーンズ展2007」 (岡山市デジタルミュージアム )を鑑賞しました。
展示は3つのシリーズで構成されていました。
1番目は「魚器(NAKI)」シリーズです。「魚器」と書いて「ナキ」と読むようです。このシリーズは、「自分とは何か」を問いかけて、自分と世界を魚と魚の住む海に見立てて、アルファベット26文字に対応して表現したものだそうです。魚の骨が主なイメージになっています。これらの作品を見ていたら、昔の日本の食卓風景を思い出します。漫画「ど根性ガエル」の主人公ヒロシ君がよく言っていたセリフ「母ちゃん、また、メザシかよ!」というのが思い出されました。ちょっと前まで日本の食卓には肉よりは魚が主に出ていたのではないかと思ったりしました。畳の上のちゃぶ台でご飯と魚で家族が食卓を囲むというのが一般的だったように思ったりしました。何にでも醤油をかけて食べたりしてたように思います。そして、魚の骨とマシーンを結びつけるところは日本的だなと思いました。魚を食べ進むと、次第に身がなくなって流線型の魚の骨のフォルムが浮かび上がってきます。尾頭付きだと死んだ魚の頭と身体の骨のコントラストによって、死のイメージとして浮かび上がってくるように思います。その姿はちょっとトホホな感じもありますが…。食べ終わったら、手を合わせてごちそうさまでしたと、何となく魚の死体に拝むような心持ちがします。また、ロボットは昆虫的なデザインがマッチするように感じていましたが、魚の骨で表現するのは世界でも明和電機くらいではないかなと思いました。ロボットなのに、どこか石器時代をイメージしてしまいます。それから、笑いだけでなく、ちょっと残酷な発想の作品もありました。偶然で魚が死んでしまうといったような仕掛けです。ですので、なんとなく死との結びつきを感じる、不思議なアートです。
2番目は「ツクバ(TSUKUBA)」シリーズです。機械仕掛けの楽器です。発想としては、スチームパンクのようなもう一つの別の科学の表現に思いました。大仰な仕掛けのわりには、他愛の無い、可愛らしい音を出すような楽器になっていたりします。また、ライブ映像も見られます。ライブは、ロボットダンスではないのですが、全体的な雰囲気としてロボットダンスな作りになっているように感じます。理系的といいますか、工学系といいますか…。音をパソコンの中だけで完結して作ってしまうことに対抗して、機械が唯物論的に作り出す音を目指した、物いじりの好きな工作屋、物いじりによって物を実感する工作屋が作り出したアートです。
3番目は「エーデルワイス(EDELWIEISS)」プログラムです。これは若い男女の性をテーマにしていて、明和電機としては異色な作品だと思います。理系的な内向的な男の子と強い欲望を持つ女の子との破滅的な世界をSFファンタジーに描いています。恋愛に不器用なために生じる悲劇か、あるいは、もっと根本的に男女の相違によって生じる悲劇かもしれません。また、作風が腐女子系な感じです。中年になってしまった自分からは、作品の中には、ちょっと距離を感じるところもありましたが、若者には共感するところも多い作品なのかもしれません。
全体的には、明和電機 は中小企業の電機メーカーという戦後の高度経済成長を支えた日本の象徴的な存在の表現だと思います。大企業の下請けで苦労したり、資金のやりくりで社長さんが走り回ったりといった中小企業のひとつのイメージだったと思います。(実際、明和電機は先代で一度倒産しているようです。)そういった日本的イメージのアート表現として、明和電機は意義のある表現だと思います。そして、そういった中小企業の活力ある楽しさ、モノづくりの楽しさを遊び心満点で伝える楽しい表現だと思います。