2006年12月4日

すりこぎ


「すりこぎ」

ひいばあさまが嫁いできた時から
我が家にある
すりこぎ
私の腕ほどの太さの
すりこぎ

ほどよくしなって
先へ行くほど徐々に太くなって
力が入る

すりばちは すりこぎに見合った大きさで
我が家でごま味噌を作るときは
台所の板の間に座布団を敷き
そこに座って両の足ですりばちをしっかりかかえ
全身に力を込めて挑むのである

ずりずりずりずり
ぷちぷちぷちぷち
ずりずりずりずり
ぷちぷちぷちぷち

味噌を入れる

にょりにょりにょりにょり
ずりずりずりずり
にょりにょりにょりにょり
ずりずりずりずり・・・・・・ず

すりこぎのはじっこについた
できかけのごま味噌 味見

「味噌、もうちょっと」

にゅりにゅりにゅりにゅり
にゅりにゅりにゅりにゅり
にゅりにゅりにゅりにゅり
にゅりにゅりにゅりにゅり

できあがったごま味噌を
香ばしいごま味噌を
ゴムベラでこそげ落とす
すりばちの上の方に付いてしまった
ごま味噌をこそげ落とす

すりこぎに付いた
ごま味噌をこそげ落とす

と、すりこぎが新しい顔を見せる

ひいばあさま
ばあさま
かあさま
わたし

四代分すり減った
すりこぎ

そのすり減った分だけ
すりこぎは
私の身体の一部になっているのだ

すられ
洗われ
日干しにされ
またすられ続けて短くなって
そのたびに新しい
すりこぎ

ひいばあさまの
ばあさまの
かあさまの
わたしの

人生